自走砲はなぜ自走するのか 前編
2015年11月30日 軍事・政治 自走砲、自走する砲と書いて自走砲。さて、自走砲とはいったいどのようなものなのでしょうか。それはズバリ自走する砲です。そのまんまですね。はい。
冗談はさておき、自走砲とは砲を自走させたもの、という事は砲を自走させる必要があるために自走砲というものが誕生しました。それではなぜ自走砲が作られたのか、今回も超初心者的視点から見ていこうと思います。
まずは自走砲を解説する前に自走する前、砲そのものについて解説していこうと思います。ずいぶん回りくどいですね。
ここで解説する砲というのはいわゆる大砲のことで、片方に蓋をされた筒状のものに火薬と弾丸を詰め込めるように作られた兵器の事です。概ね鉄砲を大きくしたものと想像してもらってかまいません。(もちろんこれに該当しない砲も存在します。)最初期には主に青銅で作られており、品質も良くなく暴発、破裂の危険を常に抱えて着弾地点より砲手のほうが危険と呼ばれるほど危なっかしい物でした。それが技術の進歩と共に安全に扱えるようになり、飛距離も耐久性も年代とともに高まっていくのでした。こうなってくると野戦、攻城戦どちらにおいても大砲というものは欠かせない存在となっていきます。特筆すべき点は大砲はそれまで城壁によって守られていた市壁や要塞を粉砕し、戦場のありかたを変えてしまった画期的な兵器ということです。
大砲の最初の大きな転換期は榴弾が実用化された時でした。榴弾とは大砲で飛ばす砲弾に火薬を詰めて飛ばし、着弾と同時に炸裂して砲弾の殻が散り散りになって周辺に飛散する物です。非常に殺傷能力が高く、着弾地点の近くに立っている人間は爆風によって吹き飛ばされるか飛翔する破片によって一瞬にして死に追いやります。大砲は人に対して最も恐れられる恐怖の兵器として生まれ変わりました。これらから身を守るには体を地面に向かって伏せているか、可能であれば事前に掘っておいた地面の穴の中で身を縮こませる事でした。大砲は壁を壊すだけでなく人間を大量に殺傷していく兵器へと生まれ変わったのです。人類の工業化に伴い、また様々な技術の発展に伴い、より高性能高品質の大砲が大量に生産されるようになると、さらに大砲はその地位を盤石なものとし、味方からは戦場の女神、敵からは恐怖の死神と恐れられるようになります。
さて、このように戦場の必需品となっていく大砲ですが、もちろんいいことばかりではなく様々な問題を抱える事になります。
まずひとつに当然の事ながら大砲を作るにはそれなりのコストがかかるということです。最初期には青銅、後に金属の塊である大砲にはそれなりの工場設備が必要ですし、製造するには大量のエネルギーを必要とします。大砲に用いる砲弾もたくさん作る必要があり、それは現代の軍においても同様に財布事情に頭を悩ませていました。
次に問題となるのは大砲を扱う人材です。大砲は基本的に放物線を描いて目標に届くわけで、何度も打ちながら修正する余裕があるのならともかく、基本的に数学的な計算によって射角を決めなければいけません。それには十分な教育を受けた人材が必要であり、現在こそ当たり前のように大学教育を受けた人材がいますが、過去においてはこういった人材を軍隊が確保するにはそれなりの苦労があったと言われています。(特に大砲の需要が急増する日露戦争~第一次世界大戦あたりでは需要に供給が追いつかず、人材の確保に大変苦労したと言われています)
次に頭を悩ませていたのは兵站の圧迫です。兵站の解説については省略しますが、要するに大砲を戦場まで運ぶには大変な労力と時間を必要とする、という事です。何しろ大砲とは大小様々ですが数トンはあるのが普通でこれを戦場まで運ばなくてはなりません。また、大砲に用いる砲弾も一緒に運ばなくてはなりません。そして現地で大砲を何度も撃っていると、撃った分だけまた砲弾を運び込まなくてはなりませんし、大砲自身にも亀裂が入ったり内腔がすり減ったりして交換をしなくてはなりません。
技術的な問題もあります。大砲を製造するにはできるだけ均一な材質が望ましいのですが(不均一な材質だと簡単にヒビが入ったりする)それには高い技術力が必要ですし、できるだけ精度を高く作る必要があります。(砲身が歪んでいると砲弾がまっすぐ飛ばない)そしてこれらを大量に生産する工業力も必要とされます。大砲をまともに扱うには技術力、工業力、教育、兵站能力、あらゆる分野で高いレベルを要求され、とにかくお金がかかる、ということを留意しなければならないのです。
という実に回りくどい解説をしたのち、ようやく次回から本編に入ります。
それではまた
冗談はさておき、自走砲とは砲を自走させたもの、という事は砲を自走させる必要があるために自走砲というものが誕生しました。それではなぜ自走砲が作られたのか、今回も超初心者的視点から見ていこうと思います。
まずは自走砲を解説する前に自走する前、砲そのものについて解説していこうと思います。ずいぶん回りくどいですね。
ここで解説する砲というのはいわゆる大砲のことで、片方に蓋をされた筒状のものに火薬と弾丸を詰め込めるように作られた兵器の事です。概ね鉄砲を大きくしたものと想像してもらってかまいません。(もちろんこれに該当しない砲も存在します。)最初期には主に青銅で作られており、品質も良くなく暴発、破裂の危険を常に抱えて着弾地点より砲手のほうが危険と呼ばれるほど危なっかしい物でした。それが技術の進歩と共に安全に扱えるようになり、飛距離も耐久性も年代とともに高まっていくのでした。こうなってくると野戦、攻城戦どちらにおいても大砲というものは欠かせない存在となっていきます。特筆すべき点は大砲はそれまで城壁によって守られていた市壁や要塞を粉砕し、戦場のありかたを変えてしまった画期的な兵器ということです。
大砲の最初の大きな転換期は榴弾が実用化された時でした。榴弾とは大砲で飛ばす砲弾に火薬を詰めて飛ばし、着弾と同時に炸裂して砲弾の殻が散り散りになって周辺に飛散する物です。非常に殺傷能力が高く、着弾地点の近くに立っている人間は爆風によって吹き飛ばされるか飛翔する破片によって一瞬にして死に追いやります。大砲は人に対して最も恐れられる恐怖の兵器として生まれ変わりました。これらから身を守るには体を地面に向かって伏せているか、可能であれば事前に掘っておいた地面の穴の中で身を縮こませる事でした。大砲は壁を壊すだけでなく人間を大量に殺傷していく兵器へと生まれ変わったのです。人類の工業化に伴い、また様々な技術の発展に伴い、より高性能高品質の大砲が大量に生産されるようになると、さらに大砲はその地位を盤石なものとし、味方からは戦場の女神、敵からは恐怖の死神と恐れられるようになります。
さて、このように戦場の必需品となっていく大砲ですが、もちろんいいことばかりではなく様々な問題を抱える事になります。
まずひとつに当然の事ながら大砲を作るにはそれなりのコストがかかるということです。最初期には青銅、後に金属の塊である大砲にはそれなりの工場設備が必要ですし、製造するには大量のエネルギーを必要とします。大砲に用いる砲弾もたくさん作る必要があり、それは現代の軍においても同様に財布事情に頭を悩ませていました。
次に問題となるのは大砲を扱う人材です。大砲は基本的に放物線を描いて目標に届くわけで、何度も打ちながら修正する余裕があるのならともかく、基本的に数学的な計算によって射角を決めなければいけません。それには十分な教育を受けた人材が必要であり、現在こそ当たり前のように大学教育を受けた人材がいますが、過去においてはこういった人材を軍隊が確保するにはそれなりの苦労があったと言われています。(特に大砲の需要が急増する日露戦争~第一次世界大戦あたりでは需要に供給が追いつかず、人材の確保に大変苦労したと言われています)
次に頭を悩ませていたのは兵站の圧迫です。兵站の解説については省略しますが、要するに大砲を戦場まで運ぶには大変な労力と時間を必要とする、という事です。何しろ大砲とは大小様々ですが数トンはあるのが普通でこれを戦場まで運ばなくてはなりません。また、大砲に用いる砲弾も一緒に運ばなくてはなりません。そして現地で大砲を何度も撃っていると、撃った分だけまた砲弾を運び込まなくてはなりませんし、大砲自身にも亀裂が入ったり内腔がすり減ったりして交換をしなくてはなりません。
技術的な問題もあります。大砲を製造するにはできるだけ均一な材質が望ましいのですが(不均一な材質だと簡単にヒビが入ったりする)それには高い技術力が必要ですし、できるだけ精度を高く作る必要があります。(砲身が歪んでいると砲弾がまっすぐ飛ばない)そしてこれらを大量に生産する工業力も必要とされます。大砲をまともに扱うには技術力、工業力、教育、兵站能力、あらゆる分野で高いレベルを要求され、とにかくお金がかかる、ということを留意しなければならないのです。
という実に回りくどい解説をしたのち、ようやく次回から本編に入ります。
それではまた
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